近畿弁護士会連合会
理事長 浅野 則明
- はじめに
- この度、京都弁護士会の推薦により、近畿弁護士会連合会の理事長に就任しました。皆さま、どうかよろしくお願いいたします。
近弁連の理事長は、従前は大阪弁護士会から選出されていましたが、2003年度(平成15年度)から各単位会の持ち回りとなりました。大阪は他の単位会1回に対し2回選出されることになることから(大阪2+他会5)、京都には7年毎に回ってくることになります。またこれは、近弁連大会あるいは近弁連人権大会が開催される単位会から選出されることにもなり、今年は12月1日に京都で近弁連大会が開催される予定になっています。京都弁護士会選出の理事長は、最初が2009年度(平成21年度)、次が2016年度(平成28年度)、今回が私ということで、京都弁護士会からは私で3人目の理事長となります。
- 私の略歴
- 私は、1958年(昭和33年)2月3日、岡山県小田郡矢掛(やかげ)町において、農家の長男(4人兄弟)として出生しました。矢掛町は県南西部に位置する人口12,800人ほどの小さな町ですが、2018年(平成30年)7月に発生した西日本豪雨で小田川の氾濫により52人もの死者を出した真備町(倉敷市)の西隣の町で、当時は矢掛町も被害が出ました。旧山陽道の宿場町で中心市街地には現在も往時の本陣・脇本陣などの町並みが残っており、幕末にはかの天璋院篤姫が本陣に泊まった記録があります。町おこしとして、矢掛宿場祭りや大名行列(毎年11月第2日曜日)などが行われています。
私は、地元の公立中学・高校を卒業した後、1976年(昭和51年)京都大学法学部に入学しました。高校時代に読んだ本で、アメリカのラルフ・ネーダー弁護士が消費者問題や公害・環境問題に取り組み、これを社会運動に築いていく姿に憧れて弁護士になりたいと思うようになりました。大学ではまず社会科学の勉強をし、社会の仕組みや制度を学ぶ中で世の中のことを全く知らない自分に気づかされ、社会の矛盾に目を向けるとともに社会的弱者の力になりたい、そのための最もよい方法は弁護士になることだと考えるようになりました。そして、無事司法試験に合格し、司法修習生(38期、高松修習)を経て、1986年(昭和61年)に京都弁護士会に登録し、弁護士としての第一歩を踏み出しました。司法問題対策委員会(当時)、人権擁護委員会、刑事委員会などを中心に活動するとともに、民事法律扶助(法律扶助協会の時代)にも関わってきました。その関係で、司法制度改革の一環として設立された法テラス京都地方事務所副所長に設立時から就任し、主に民事法律扶助と国選弁護を担うことになりました。そして、2018年度(平成30年度)には京都弁護士会の会長に就任し、2019年度(令和元年度)からは法テラス京都地方事務所の所長として、その運営に取り組んでまいりました。
近弁連については、まだまだ不慣れなところや至らぬ点が多々あると思いますので、各単位会の皆さま方、近弁連の常務理事、理事の皆さま方には、この1年間ご支援ご指導を賜りますようお願い申し上げます。
- 弁護士、弁護士会のあるべきスタンス
- 弁護士に課せられた使命は、言い古された言葉ですが、「基本的人権の擁護と社会正義の実現」であり、その使命に基づき弁護士でしかなし得ない積極的な活動が求められています。特に、身近なところでは、社会的弱者や少数者の人権を法の光で照らし、救済していくことが求められています。また何よりも大切なものは平和です。戦争は最大の人権侵害であると言われるように、ロシアのウクライナ侵攻が続く昨今の世界情勢を鑑みると、日本国憲法の恒久平和主義の理念に沿った活動が求められていると思います。
しかしながら、個々の弁護士の力はさほど大きくないことから、これを結集して社会的な影響力をもたせるのが弁護士会の役割であると思います。市民の権利侵害があれば、弁護士会はたとえ困難な課題でも精力的に取り組んでいくべきです。弁護士の活動は、時として国家権力や社会的強者と激しく対立することがあります。権力を怖れず、これを対峙するために弁護士自治が認められています。弁護士自治を脆弱化しようとする動きがあれば、これを許さず弁護士自治を堅持していくことが重要であると考えます。
- 近弁連について
- 近弁連は、全国に8つある弁護士会連合会(北海道、東北、関東、中部、近畿、中国、四国、九州)のひとつですが、その根拠は弁護士法にあります。「同じ高等裁判所の管轄区域内の弁護士会は、共同して特定の事項を行うため、規約を定め、日本弁護士連合会の承認を受けて、弁護士会連合会を設けることができる」(44条)と定められています。これは、各弁護士会が単独で行うより共同して行う方が、その目的達成のためより有益と考えられる事項を処理するために設立されることになりました。近弁連は、昭和24年に設立され、日弁連の承認のもとに「近畿弁護士会連合会規約」を定めています。
近弁連の各単位会は、会員数5000人の大単位会である大阪、会員数1000人前後の中単位会である兵庫県と京都、会員数100~200人の小単位会である滋賀、奈良、和歌山の6単位会です。近弁連は、大・中・小の単位会によってバランスよく構成されており、このような弁護士会連合会は他にはありません。各単位会の抱える課題や悩みは、その規模によって異なることも多いと思います。中小単位会は大単位会から参考になることを吸収することができ、同じ規模の単位会においてはお互いに情報・意見交換することによって多くの課題等を解決することができます。また、大単位会は中小単位会に対し、様々なアドバイスや協力をすることができ、反対に中小単位会の取組を参考にして、新たな発見を行い、自らの課題を前進させることができると思います。「近弁連はひとつ」という合言葉がありますが、これはこのような6単位会の結束を意味していると思います。京都弁護士会は、兵庫県弁護士会と並んで中規模弁護士会であり、大単位会の大阪と小単位会の滋賀、奈良、和歌山とを繋ぐ役割を果たしていかなければならないと考えています。その意味で、私が近弁連理事長として果たす役割は重要であると思います。
現在、各弁護士会が共通して抱える課題としては、基本的人権の擁護としての憲法問題、法曹人口・養成問題、死刑制度の廃止、男女共同参画社会の実現、民事裁判のIT化、再審法改正を含めた刑事司法制度の改革、地震等の自然災害に対する対応等があります。これらの課題に対して、近弁連の連携が重要なことは言うまでもありません。私は近弁連理事長として、かかる課題に率先して取り組んで行こうと思います。皆さま方には、近弁連の会務運営にご協力いただきますようよろしくお願いいたします。
|
 |
近畿弁護士会連合会
理事長 浅野 則明 |
|